研究概要 |
【目的】これまでに、未分化間葉系幹細胞 (MSC) にトリプトファン誘導体を作用させると、骨芽細胞分化マーカーであるALPやBSPの発現量が増加すること明らかにした。さらに、このトリプトファン誘導体による発現誘導効果は、骨芽細胞(MLO-A5)と共培養したMSCでは著しく亢進した。また同様の現象は、骨芽細胞分化誘導サイトカインであるBMP-2を用いた場合にも観察された。そこで、本研究は骨芽細胞とMSCの相互作用に着目し、その分子機構の解明を目的とした。 【方法】恒常的にGFPを発現するMSC(10T-GFP)を樹立し、この細胞とMLO-A5を共培養した。その後、セルソーターを用いて10T-GFPを単離し、骨芽細胞関連因子の発現量を解析した。また、ヒストンタンパク質のアセチル化の状態について、抗アセチル化ヒストン抗体を用いたWestern blot 法によって解析した。さらに、ChIP assayによって、転写因子に対するゲノムDNAのaccessibilityについて解析した。 【結果】MLO-A5と共培養した10T-GFPでは、単独で培養した対照群と比較して、Runx2, Osterix, Dlx5といった骨芽細胞分化関連転写因子の発現レベルに差は見られなかった。同様に、これら転写因子の発現に対するBMP-2やトリプトファン誘導体の影響も両群において差は認められなかった。一方、ALPおよびBSPの発現量は、BMP-2あるいはトリプトファン誘導体を作用させた共培養群において、対照群と比較して顕著な増加が認められた。さらに、共培養群では、ヒストンタンパク質のアセチル化レベルが亢進していた。これらの結果から、MLO-A5が10T-GFPのクロマチンをリモデリングすることで、BMP-2やトリプトファン誘導体によるALPやBSPの発現誘導を亢進している可能性が示唆された。
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