研究概要 |
22年度の本申請研究では,幹細胞マーカーの一つであるThy-1がsubodontoblastic layerに局在することを示し,さらに単離したThy-1陽性細胞の硬組織形成細胞への分化能を検討した。免疫組織化学的観察において.ラット蕾状期および帽状期臼歯歯胚ではThy-1の特異的な反応は認められなかった。象牙質形成開始後の鐘状期および歯根形成期では,subodontoblastic layerの歯髄細胞で強い陽性反応を示したが,象牙芽細胞およびその他の歯髄細胞は陰性であった。切歯でも同様に,subodontoblastic layerの歯髄細胞で特異的に陽性反応が認められた。次に,この切歯歯髄からFluorescence Activated Cell Sorter (FACS)を用いThy-1陽性および陰性細胞を分取した。real time PCR解析にて,分取したThy-1陽性細胞は,組織非特異的アルカリホスファターゼおよび神経成長因子受容体(NGFR)の発現が高いことから,subodontoblastic layerの細胞を多く含むと考えられた。また,Thy-1陽性細胞は陰性細胞と比べ,Bone morphogenetic protein(骨誘導因子;BMP)-2添加後に顕著なアルカリホスファターゼ活性の上昇を示し,アリザリンレッド陽性の石灰化基質を早期に形成した。 以上の結果より,subodontoblastic layerには硬組織形成能が高い細胞が多く存在することが推察された。今後は,Thy-1陽性歯髄細胞の硬組織形成細胞への分化機構ならびにin vivoにおける分化能を検討する予定である。
|