研究概要 |
断髄および直接覆髄後に再生する象牙芽細胞は,血管周囲に局在すると推定される組織幹細胞あるいは解剖学的位置関係からsubodontoblastic layerの細胞に由来すると考えられている。しかし,有用な細胞マーカーが存在しなかったことから,これらの細胞が歯髄修復時に象牙芽細胞へ分化するという直接的な証明はなされていない。これまでの本研究において,細胞表面タンパク質であるThy-1がsubodontoblastic layerの歯髄細胞特異的に局在し,FACSにより分取したThy-1陽性歯髄細胞はin vitroにおいて高い硬組織形成能を示すことを明らかにしてきた。そこで平成23年度の研究では,Thy-1陽性歯髄細胞のin vivoにおける分化能を検討した。 Green fluorescence protein(GFP)発現ラット歯髄から回収したThy-1陽性および陰性細胞群をハイドロキシアパタイトとともに野生型ラット腹部皮下へ移植した。7週後,両移植群ともにdentin sialoprotein陰性の骨様組織が観察されたが,陽性群で多量の硬組織形成が認められた。また,移植細胞由来であることを示すGFP陽性細胞は,両移植群ともに新生硬組織基質の表面および周囲で認められ,硬組織形成細胞は移植細胞に由来することが確認された。 以上の結果から,Thy-1陽性細胞はsubodontoblastic layerに局在し,分取したThy-1陽性細胞はin vitroおよびin vivoにおいて高い硬組織形成能を示したことから,subodontoblastic layerは,象牙質再生時における細胞の供給源となることが示唆された。
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