研究課題
ヒトの体を内側から支えている骨には3種類の細胞が存在する。これらは骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞と呼ばれ、3種類の細胞が相互に連携したシステムネットワークを構築している。特に外的な力学的刺激に対しては敏感であり、機械刺激に応答して骨量の調整を行っていることが知られている。骨芽細胞は機械刺激を受けると細胞内のカルシウム濃度が上昇することが知られており、このカルシウムは細胞外からチャネルタンパク質を介して流入していることがわかっている。このチャネルタンパク質はtransient receptor potential(TRP)チャネルの一つであるTRPV4が担っていることが報告されているが、我々の研究の結果、マウスの骨芽細胞株の一つであるMC3T3-E1細胞にはこのほかにも多くの機械的刺激により活性化されるTRPチャネルタンパク質が発現していることが明らかとなった。そこでこれらのTRPチャネルが機械的刺激に対してどのように使い分けされているかを目的としていくつかの刺激方法(せん断応力刺激、浸透圧刺激)を用い、個々の刺激に対してどのようなTRPチャネルが応答するかをfura-2を用いた細胞内カルシウム濃度測定を行った。その結果、いずれの刺激においてもMC3T3-E1細胞内では細胞内のカルシウム濃度上昇が見られた。さらにTRPVの阻害薬であるruthenium red存在下では細胞内カルシウム濃度上昇が抑制されたことからTRPVサブファミリーに属するチャネルタンパク質の関与が示唆された。しかしながら浸透圧刺激においてはTRPV4の浸透圧感受性を阻害する17-ODYAを適用しても細胞内のカルシウム上昇は抑制されなかったことから、浸透圧刺激による細胞内カルシウム上昇においてはTRPV4の関与が小さいのではないかと考えられた。
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J.Neurosci.
巻: 30 ページ: 5744-5753