研究概要 |
ヒトの体を内側から支えている骨には3種類の細胞が存在する。これらは骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞と呼ばれ、3種類の細胞が相互に連携したシステムネットワークを構築している。特に外的な力学的刺激に対しては敏感であり、機械刺激に応答して骨量の調整を行っていることが知られている。骨芽細胞は機械刺激を受けると細胞内のカルシウム濃度が上昇することが知られており、このカルシウムは細胞外からチャネルタンパク質を介して流入していることがわかっている。このチャネルタンパク質はtransient receptor potential(TRP)チャネルの一つであるTRPV4が担っていることが報告されているが、我々の研究の結果、マウスの骨芽細胞株の一つであるMC3T3-E1細胞にはこのほかにも多くの機械的刺激により活性化されるTRPチャネルタンパク質が発現していることが明らかとなった。そこでこれらのTRPチャネルが機械的刺激に対してどのように使い分けされているかを目的としていくつかの刺激方法(せん断応力刺激、浸透圧刺激)を用い、個々の刺激に対してどのようなTRPチャネルが応答するかを細胞内カルシウム濃度測定で行った。まず、TRPV2,TRPV4に対するsiRNAを作成し、MC3T3-E1細胞に適用してノックダウン効率をreal-time PCR装置を用いて見積もったところ、それぞれ約20%程度にまで発現を抑制することが出来た。このsiRNAを適用したMC3T3-E1細胞に対して浸透圧刺激を加えたところ、細胞内のカルシウム上昇はコントロール細胞と比べて変化はなかった。一方、せんだん応力刺激を加えたところ、TRPV2,TRPV4の発現を抑制した細胞で細胞内のカルシウム上昇が抑えられる傾向が見られた。このことは細胞に与えられた機械刺激の種類により応答するセンサータンパク質が異なることを示唆している。
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