研究概要 |
本研究課題は,新規小胞体輸送分子PRIPが仲介する開口分泌機構の解明である.最終的には,唾液腺における分泌機構の解明を目的としている.今までに,PRIP欠損動物の詳細な解析をおこなっており,その実験結果から膵臓・ランゲルハンス島におけるインスリン開口分泌がPRIP蛋白により制御されることが判明している. したがって本年度は,研究計画に従い,PRIP分子が開口分泌制御をおこなっていることが確認されているインスリン開口分泌機構について検討をおこなった. マウスβ細胞様細胞系であるMIN6にPRIP遺伝子に対するsiRNAを挿入した結果,グルコース刺激誘発性インスリン分泌に増加傾向が認められた.この増強傾向は,グルコース刺激直後に認められる第一相の分泌ではなく,刺激後約5-10分から開始する第二相で認められた.この時,PIRP蛋白の発現量は約6割程度に減弱していた.この実験結果は,PRIP蛋白がインスリン開口分泌を制御することを直接示す結果であり,唾液腺を用いた解析に応用できる実験方法を開発したものである. さらに,PRIP蛋白と直接接合することが知られている蛋白質について解析をおこなった.その結果,GABARAP蛋白のN末端22アミノ酸残基をMIN6に挿入することにより,分泌されるインスリン量が第二相において減少した.この22アミノ酸残基は,GABARAPがtubulinと結合する領域であり,同アミノ酸残基がGABARAPとtubulinとの結合を阻害することを確認している.この実験結果から,GABARAPのtubulin結合を介したインスリン開口分泌制御機構が存在し,同機構とPRIP蛋白とのクロストークの可能性が考えられる.
|