生体内の骨組織は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成がバランス良く行われることによって維持されており、このバランスが崩れると骨粗鬆症などの疾病が引き起こされる。破骨細胞の分化についてはM-CSFとRANKLの関与など多くのことが明らかにされてきたが、成熟破骨細胞の機能など未知の部分も多く残されている。 本研究課題のテーマの1つ、細胞極性については、マウス骨髄細胞からの破骨細胞形成系を用い、多くのRabファミリーGTPaseおよびKIFスーパーファミリーモーター分子が分化に関係なく発現していることを明らかにした。分化によって発現誘導もしくは抑制される分子は見つかっていない。極性を示すことが知られている分子のいくつかについて、GFP融合タンパク質発現ベクターを作製し、破骨細胞内の局在を解析する系を作製した。この系を用いてRabファミリー分子のノックダウン時の影響を解析したが、現在まで大きな影響を与える分子は見つかっておらず、さらに検討を進める。 もう1つのテーマとしてGタンパク質共役型エストロゲン受容体GPR30の破骨細胞分化への影響の解析を行った。その結果、フラボノイドの1種であるケルセチンがGPR30を介して破骨細胞の分化抑制を行っていることを明らかにした。破骨細胞の分化段階のすべての時期でERαとGPR30が発現していること、ケルセチンのシグナルにはERαよりGPR30が関与していること、また、ケルセチンによりAktのリン酸化が抑制されることが、分化抑制のメカニズムの一端であることを示した。
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