研究概要 |
非ステロイド性抗炎症薬(Non-steroidal anti-inflammatory drugs; NSAIDs)は,破骨細胞の分化・骨吸収活性を調節し,骨代謝に関与することが知られている.NSAIDsの主な作用機序としてcyclooxygenase(COX)-1,2の活性抑制が挙げられるが,破骨細胞におけるCOXの作用については未だ不明な点が多い.本研究では破骨細胞の分化過程におけるCOXの動向を解明し,NSAIDsの作用機序について詳細な検討を行った. (1).細胞分化過程におけるCOX発現の解析:造血幹細胞から多核巨細胞である破骨細胞への分化過程における細胞内COX-1,2の動向を,経時的に検索した.造血幹細胞においては,COX発現はほとんど認められなかったが,分化因子を加えた誘導系では,形成前期からCOX-1,2ともに発現を認めた. (2).骨吸収活性に関連する炎症性物質の解明:昨年までの研究で,成熟破骨細胞を象牙切片上に播種して発現させた骨吸収活性時に,破骨細胞内のCOX-2は増加するという結果を得た.炎症起因物質LPS添加時の破骨細胞分化系においても,細胞内COX-2活性およびprostaglandin(PG)E2が増加する傾向が認められた. (3).COX活性上昇に伴う核内転写因子の動向の解析:細胞内のCOX-2発現時に,上流転写因子ERKの発現を確認した. (4)NSAIDs添加時のCOX動向解析とNSAIDs作用機序の検討:骨細胞分化誘導は,使用するNSAIDsにより異なる反応を示した.複数のCOX-2選択的阻害薬を用いた実験系において,NS-398,celecoxibでは分化が抑制されたが,SC-58125においては分化への影響を認めなかった.NFκB,1κB等の核内転写因子の関連性について,現在も継続して解析中である.
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