研究課題
歯周病や関節リウマチなどの炎症性骨疾患は、持続した炎症によって骨組織破壊が生じ、最終には歯牙の損失や関節機能が破綻するなど、患者のQOLを著しく損ねる。このように、炎症と骨吸収は密接に関わっており、歯周組織や関節のさまざまな細胞やサイトカインを介した複雑なメカニズムによって制御されていることが知られている。細菌の構成成分であるLipopolysaccharide(LPS)はToll-like receptor 4 (TLR4)に直接結合し、炎症や自然免疫を引き起こすことが知られており[Akira S., et al.Nat Immunol.2 : 675-680(2001)]、これまで、LPSやTLRによる炎症性骨破壊の発症メカニズムについて、多くの研究が報告されている。平成22年度は、TLRシグナルの骨吸収における役割を明らかにするため、破骨細胞の分化課程における遺伝子発現変化を網羅的に解析した。まず、マクロファージを破骨細胞分化誘導因子であるRANKLで刺激し、0、24、72時間後の細胞からRNAを調整しマイクロアレイを行った。TLRシグナルの下流の分子に着目して解析を行った結果、転写因子interferon regulatory factor 5 (IRF5)の発現が経時的に減少することがわかった。そこで、IRF5強制発現ベクターを構築し、レトロウイルスでマクロファージに強制発現させたが、破骨細胞形成が顕著に抑制されることはなかった。そこで、以前Zhao B.らによって報告された結果をもとに、破骨細胞分化を負に制御している転写因子IRF8の発現を制御している因子群の挙動について、再検討を行った。その結果、転写因子STAT5がIRF8の発現を制御していることが示唆された。現在、マクロファージにSTAT5を強制発現させる、あるいはSTAT5 siRNAで発現抑制させたとき、破骨細胞分化がどのように変化するか検討している。
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