研究課題
歯周病や関節リウマチなどの炎症性骨疾患は、持続した炎症によって骨組織破壊が生じ、最終的には歯牙の損失や関節機能が破綻するなど、患者のQOLを著しく損ねる。このように、炎症と骨吸収は密接に関わっており、歯周組織や関節のさまざまな細胞やサイトカインを介した複雑なメカニズムによって制御されていることが知られているが、詳細なメカニズムはいまだ不明な点が多い。そこで本研究では、骨吸収能を担う破骨細胞の分化を制御する因子を探索し、その機能解析を行い、炎症性骨破壊のメカニズムの一端を解明することとした。単球・マクロファージは破骨細胞と樹状細胞の共通の前駆細胞で、RANKLというサイトカインで刺激すると破骨細胞へ分化し、GM-CSFというサイトカインで刺激すると樹状細胞へと分化する。共通の前駆細胞からそれぞれの細胞へ分化が振り分けられており、この分化過程における遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。このとき、Zhao B.らによって転写因子IRF8が破骨細胞分化を負に制御していることが報告され(Nature Medicine 15:1066-1071, 2009)、この結果を基に、IRF8の発現を制御している因子群の挙動について、さらに検討した。その中で、破骨細胞分化過程で発現変化が見られた因子で、樹状細胞の分化に必須の転写因子であるSTAT5が有力な候補因子として挙げられた。以前、転写因子STAT5がIRF8の発現を制御していることが報告されたことから、マクロファージにSTAT5を強制発現させる、あるいはSTAT5特異的阻害剤やSTAT5 siRNAでマクロファージでのSTAT5の発現を抑制させたとき、破骨細胞分化がどのように変化するか検討した。その結果、STAT5は破骨細胞分化を負に制御していることが示唆された。今後、更なる解析を行い、STAT5がどのように骨代謝を関与しているか解析を行う。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Cytotechnology
巻: (印刷中)(取得中)
http://www10.showa-u.ac.jp/~oralphys/