免疫異常の観点からシェーグレン症候群に関する数多くの研究が報告されているが、本疾患は他の多くの自己免疫疾患と同様に病因ならびに病態の発現機序の詳細は未だ不明である。我々は,ヒト唾液腺組織ならびに同組織由来唾液腺細胞,さらに唾液中におけるIL-18の発現とその役割について検討し,シェーグレン症候群患者の唾液腺の腺房上皮細胞にIL-18が発現すること,浸潤するTリンパ球の多くがIL-17を発現しているTh17細胞であることを免疫組織化学的に解明した。さらに,唾液腺細胞を用いた分子生物学的な解析により,IL-18はIL-17との相互作用によってヒト唾液腺細胞からサイトカインやケモカインの産生を誘導し唾液腺炎の発現に関与する可能性を示めした。また患者唾液中にIL-18が分泌されることも明らかにした。細胞内で合成されたIL-18の前駆体は不活性化型であり,細胞外に分泌されて炎症を誘導する生物学的活性を得るにはプロセッシングを受ける必要がある。このプロセッシング経路に係わる因子を検討した。2011年3月に生じた東日本大震災によって,それまでにヒトから採取した唾液腺組織ならびに組織由来の細胞試料を損失したため本来の研究計画とは異なっているが,検討には新たに唾液腺細胞株HSGを用いた。結果,HSGセルライセート中には分子量24kDaの前駆体でIL-18が存在することを確認した。さらにインフラマソーム構成分子の有無をウェスタンブロッティング法で検討している。
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