セロトニン受容体2Cは中枢神経系における摂食行動調節に密接に関わっており、脳組織では複数のアイソフォームが発現している。この分子多型の成立機序として、脳特異的に発現するMBII-52snoRNAが受容体2C mRNAとの塩基相補性を持つことに着目し、前年度までに、マウス脳抽出物のアフィニティ精製により受容体2C mRNAの転写後修飾に作用しうる新規MBII-52-タンパク複合体(Nucleolin、ELAVL1を含む)を同定した。本年度では、本来のsnoRNA複合体(Fibrillarinコアタンパクと複合体を形成して核小体におけるリボソームRNA成熟を補助する)と新規複合体の成立機序の解明を目指して、ゲノム上に多コピー存在するMBII-52バリアントと機能複合体との関連を検索した。塩基多型解析ではゲノムクラスター上のMBII-52バリアントは51種であったが、マウス脳抽出物の転写産物解析で得られたMBII-52はそのうち15種であった。また転写産物解析においては、MBII-52転写産物の27%が45塩基前後の短躯型(全長は79塩基)として検出された。 In silicoでのRNA二次構造予測により元となるMBII-52構造を解析すると、これらのMBII-52バリアントは転写後全長で存在するMBII-52バリアントよりも熱力学的に不安定な高次構造をとることが判明した。免疫沈降により、短躯型MBII-52はFibrillarinと会合するが、NucleolinとELAVL1とは結合していないことも明らかとなった。これらの成果により、1)転写されたMBII-52が機能複合体に組み込まれるうえでは高次構造の安定したバリアントが主体となること、2)構造の不安定なMBII-52は分解されるがFibrillarinとの複合体として存在すること、を明らかにした。
|