昨年度までに、放射線が歯根形成障害を引き起こすメカニズムを解明するため、歯冠完成が見られる生後5日齢のマウス頭部にエックス線を限局して照射し、歯根の形態異常がみられる照射線量についての検討を行った。そのほか、免疫染色を行う際の各抗体に適した抗原の賦活化方法、抗体の希釈濃度等の条件設定等の解析のための検討を行った。 本年度は、昨年度までの結果から生後5日齢マウスにエックス線を照射し(0Gy、10Gy、20Gy)、生後6、7、9、11、13、15日齢を観察対象として、マイクロCT解析、HE染色、免疫染色(抗サイトケラチン抗体、抗ネスチン抗体)、BrdU取り込み実験、TUNEL染色をおこなった。 マイクロCT解析により10Gy、20Gy照射の歯根の長さは、0Gyと比べて有意に短くなることを確認し、組織観察により生後11日齢でヘルトヴィッヒ上皮鞘(HERS)細胞の動態の異常、根尖部の象牙質形態の異常(HERSを取り囲むように象牙質を形成)を確認した。 本研究で用いた頭部照射モデルは、従来行われている頭部照射方法と同様であると考えられるが、照射野に含まれる内分泌器から分泌するホルモンの血液解析を行ったところ、線量依存的にホルモン量の減少が見られた。そのため、頭部照射による歯根形成障害は、内分泌器のダメージによる二次的影響である可能性も考慮し、放射線照射が引き起こす歯根形成障害のメカニズムのさらなる解明を行いたいと考えている。 本研究の一部は、第53回歯科基礎医学会学術大会・総会(2011年9月30、10月1日、2日、長良川国際会議場)にて報告を行った。
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