【目的と意義および重要性】EGFは主に耳下腺などの唾液腺と十二指腸のBrunner腺で産生される上皮細胞の分裂を促進するサイトカインで、分裂の盛んな消化管上皮の維持に寄与すると推測される。シェーグレン症候群(SS)患者では、舌乳頭平低化や口腔粘膜萎縮が見られ、口腔内痺痛や不快感を伴いquality of life(QOL)の低下を招く。これらは一般的に唾液分泌量低下に伴う口腔内クリアランス低下によるものとされるが、加えて唾液腺で産生される各種サイトカインのプロファイルの変化が関連することが考えられる。EGFの特性を勘案すると、SSにおける口腔粘膜や舌表面、歯牙の障害は、SSにより唾液腺が破壊された結果、EGF産生が低下し、唾液中EGFの減少が関与している可能性を考える。SS患者の唾液中EGFについてこれまで検討はなされておらず、SS患者における口腔内病変と唾液中EGF産生能との関連性を明らかにすることでSS患者のQOLを著しく低下せしめる口腔内病変の新規治療戦略の構築(EGFを含有した含嗽薬や吸入薬など)にも貢献できる可能性がある。 【研究成果】現時点で具体的な研究結果は出ていない。SS患者、非SS患者でSSの診断のために実施するガム試験を行い、唾液を全量採取した上で、その質量を計測し、採取した唾液の一部を用い唾液中EGF量および濃度をELISA法により測定し、EGF産生能を評価する。その唾液検体収集および検体の分離・保存、唾液中EGFの測定、またSS患者の口腔内病変を定量的に評価するため、口腔内QOLの評価法として国際的に使用されている問診票であるOHIPの日本語版(OHIP-J)を採用し、口腔内病変を定量的に評価するための口腔内病変に関する問診の実施とそのスコアリング化などは実施している。一定の症例・検体数に到達すれば統計学的解析を行う予定である。
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