研究概要 |
本年度においては,熱処理をおこなったファイルを使用し,機械特性である曲げ特性および疲労特性の計測を行った.さらには,同熱処理ファイルを使用し,アクリル樹脂製模擬湾曲根管模型を使用し,根管形成に与える影響について,評価を行った. まず,曲げ試験から,熱処理を適正温度で行うことによって,弾性領域および超弾性領域において,曲げ荷重が減少し,柔軟性が向上することが明らかとなった.さらに,自作の回転曲げ疲労試験機を使用した,疲労試験から,曲げ試験と同様に,適正温度条件化において,疲労寿命が向上することが,示唆された.以上の結果は,冷間加工を中心とした,製造工程上で発生する,金属格子内のひずみや転位が生じ,内部ひずみとなる.熱処理は,金属原子に自由エネルギーを付与することにより,再配列を促し,結果内部ひずみを報酬することが可能となる.そして,原子の移動がスムーズになることから,柔軟性や延性が向上し,亀裂の発生や進展を防ぐことで,疲労に対する抵抗性を向上させると推察された. 一方,根管形成能の評価においては,熱処理群は無処理群に比較し,特に根尖において追従性の高い根管形成が可能であった.さらに特筆すべきは,これまでのニッケルチタンファイルの根管形成で大きな問題となっていた,根管形成中に突然破断するという問題に対し,本実験条件下においては,熱処理群では,無処理群に比較し,破折の発生率が低く,耐破折に対し有用であることが推察された. 以上の結果から,熱処理によりニッケルチタンファイルの柔軟性および疲労寿命が向上することにより,特に湾曲根管において,より効果的に根管形成が行える可能性が示唆された.
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