酸・塩基抵抗層(Acid-Base Resistant Zone、ABRZ)の解析が進められている中で、歯質強化をFCP(フッ素・カルシウム・リン酸)溶液やフッ素徐放能を持つ接着性修復材料を用いて行い、これまで観察されていたABRZがさらに強化された様子が確認された。しかしながら表面の解析においては、これらの溶液を塗布するのみでは顕著な再石灰化効果が脱灰象牙質においては観察できない(Transvers microradiographyやSEM観察)ことも確認された。 また、これまでの研究において達成された、ヒト抜去歯を用いた人工う蝕象牙質内層の作成において、さらに健全歯や天然う蝕象牙質内層との比較を、ナノインデンテーション試験を用いて詳細に行った。その結果健全歯に比べて表層から150μm程度までの硬さは、人工う蝕及び天然う蝕において有意に低い値を示し、それぞれの間には有意差はなかった。 一方、フッ素とカルシウム1つの水溶液に入れるとフッ化カルシウムの沈殿を即座に形成し、イオン化された状態での共存は難しいと考えられて来た。しかしながら、アメリカNIST(National Institute of Standards and Technology)のChowらによって、FCP溶液と呼ばれるF:Ca:P比が6:10:1になるように配合された水溶液中では、CaFなどの沈殿を起こさず安定した状態を作れることが発見された。この研究については1つの容器中での安定した管理が可能となり、FCP溶液と他のフッ化ナトリウム水溶液との間でABRZの観察を行うことにより、それぞれの間に形態学的な差が生じることが確認された。
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