牛海綿状脳症(BSE)の発生以来、魚由来コラーゲン(Fish Collagen Peptides : FCP)が注目されており、近年、栄養補助食品や食品添加剤として多用されている。しかし、その細胞機能に対する効果については、未だ解明されていない。平成22年度には、コラーゲンの合成、質ならびに石灰化に対するFCPの効果について、マウス頭蓋骨由来前骨芽細胞(MC3T3-E1細胞)を用いて検討した。その結果、FCPを総濃度が0.2%(w/v)となるように添加した培地で、前述の細胞を48時間培養後、コラーゲン翻訳後修飾関連遺伝子であるリシルヒドロキシラーゼ(LH)1-3、リシルオキシダーゼ類似(LOXL)2-4ならびにグリコシルトランスフェラーゼ25ドメインコンテイニング1(GLT25D1)遺伝子発現が、FCPを添加しない培地で培養した対照群と比較して有意に増強していた。さらに、14日間の培養で産生されたコラーゲンがアミノ酸分析器と架橋測定器で分析された時、FCP処理群は、対照群と比較して、コラーゲン合成量、ヒドロキシリシン(Hy1)量、Hy1アルデヒド由来架橋量が有意に増加しており、コラーゲン成熟も促進していた。その上、von Kossa染色により、基質石灰化を促進することも実証した。使用したFCPは焼津水産化学から供与されたものであるが、SDS-PAGE分析により様々な分子量(3~15kDa)を含む試料であることが判明した。そこでより詳細な特性を分析するため、飛行時間型質量分析法により分子量の分布を検討した。その結果、m/z値2351.07~8027.66間に9つの有効ピークを認めた。SDS-PAGE法の結果より小さな分子量を認めたのは、三重らせん構造をもつコラーゲンの形状ならびに疎水性アミノ酸残基の低含有という特性により、電気泳動における移動度の遅延を招いたためと考えられる。
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