研究概要 |
平成22年度の結果に基づき,摘出血管に対するレジン青色光照射器(ハロゲン光)を用いて,光照射により発生する活性酸素の影響を検討するため以下の実験を行った。 【実験1】光照射による血管平滑筋へのストレス解明 1)摘出血管に対する光照射の影響;ラット摘出大動脈をKrebs-Ringer溶液に浸漬し,青色光を照射した後試料を回収し,活性酸素による酸化ストレスマーカーであるマロンジアルデヒド(MDA)を測定した結果,光照射時間依存的にMDA濃度の増加が認められた。 2)血管平滑筋細胞に対する酸化ストレスの検討;正常ヒト血管平滑筋細胞(ACBRI716)を培養し青色光照射後,細胞を回収,その細胞活性およびアポトーシスを測定した。その結果,青色光照射により細胞活性は非照射群と比較し有意に低下した。また,光照射によりアポトーシスの指標であるカスパーゼ3/7活性は有意に増加した。 【実験2】光照射による歯髄酸化ストレスの防御法の検討 1)抗酸化剤による防御法;上記の光照射に対する影響に対し,細胞内グルタチオンの供給源であり,それ自体が抗酸化剤としての作用を有するN-acetyl-L-cysteine(NAC)をプレインキュベートし,光照射を行った結果,カスパーゼ3/7活性は有意にコントロールレベルまで回復した。 これら以上の結果から,歯科臨床で頻用されるレジン光照射器による青色光照射は,照射時間依存的に歯髄血管細胞に酸化ストレスを惹起し,歯髄の加齢を促進させる可能性を示唆した。しかし,この影響に対し,抗酸化剤であるNACの投与は光照射に対する加齢の抑制を誘導する可能性が認められた為,今後の歯科臨床に於いて新たな防御法の確立に繋がることが示唆された。
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