研究概要 |
本研究では,強い再生能力を有するヒト骨格筋組織から確立した骨格筋幹細胞,さらに外胚葉・内胚葉・中胚葉,そして第4の胚葉と言われている神経堤細胞への分化機構の解析に有用なES細胞,そして,成熟した細胞を初期胚の状態にリセットしたips細胞を用いて,象牙質・歯髄複合体の再生メカニズムを解析し,従来のう蝕治療法や覆髄法に代わる新規な幹細胞を用いた細胞導入象牙質・歯髄複合体再生治療法のモデルを確立することを目的とする. 平成23年度の具体的到達目標は,各幹細胞の象牙芽細胞分化誘導における細胞外マトリックスに対する細胞接着能と運動能の解析を行うことであり,以下の結果を得た. 細胞外マトリックス(ラミニン-1,-2,フィブロネクチン,コラーゲンタイプI)に対する細胞接着能と運動能の解析: ヒト骨格筋幹細胞,マウスES細胞とiPS細胞にHanging drop法を施した後,レチノイン酸(RA)存在下で3日間浮遊培養させ,コラーゲン上に細胞を播種し,BMP-4存在下で7日間培養をおこなった.ヒト骨格筋幹細胞,マウスES細胞とiPS細胞のRAとBMP-4添加群における、象牙芽細胞分化誘導前後の細胞外マトリックス(ラミニン-1,-2,フィブロネクチン,コラーゲンタイプI)に対する細胞接着能と運動能の解析を行った結果,象牙芽細胞への分化誘導によりラミニン-1,フィブロネクチンとコラーゲンタイプIに対して強い接着能と運動能を有することが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は各幹細胞から分化誘導した象牙芽細胞を,間葉系幹細胞(理化学研究所より入手予定)と共存培養し,歯胚での上皮-間葉相互作用を誘導する因子(activin,EGF,FGF-2,IGF-1,TGF-β)を作用させ象牙質・歯髄複合体の再生を検討する.さらに,分化誘導した象牙質・歯髄複合体を1型コラーゲンの人工細胞外マトリックス(ECM)と一体化させ,8週齢の雄性Wister系ラットを用いたin vivoでの形態学的観察を行う.
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