本年度は、難治性根尖性歯周炎の症例において高頻度に検出される細菌種を用い、レーザー照射による殺菌効果の検討を行った。 〈実験1〉透明エポキシ樹脂模型を使用。 手用RTファイルを用い#40まで根管拡大形成後、Streptococcus mutans、Enterococcus faecalis、Candida albicansの菌液を根管内に注入し、感染根管モデルを作成した。S.mutans感染根管モデルにおいては、10pps・30mJで99.9%の殺菌効果を示し、25pps-30mJでは100%(すべて検出限界以下)であった。E.faecalisにおいては、10pps・30mJで97.4%、25pps・30mJでは97.6%の殺菌効果を示し、C.albicansにおいては、10pps・30mJで98.5%、25pps・30mJでは98.8%の殺菌効果を示した。いずれの菌種も照射条件間による有意差は認められなかった。 〈実験2〉ヒト天然抜去歯を使用。 S.mutans感染根管モデルにおける殺菌効果は、99.0%であった。E.faecalisにおいては、99.9%の殺菌効果を示した。菌種間には有意差は認められなかった。 根管拡大形成が可能な照射条件において、透明根管模型およびヒト抜去歯歯根ともに、高い殺菌効果を示した。この理由として考えられるのは、レーザー照射による熱の影響がある。また、根管表層部においては、形態学的観察からは細菌表層部にはヒビ割れた破壊像が確認された。このヒビ割れ部より、レーザーが直接菌体内に作用し、菌体内にて水分が瞬時に気化し、菌体内で微小爆発が発生し、細菌の細胞構造を物理的に破壊した可能性も考えられる。さらに、タンパク質を変性させる温度は60℃以上であるため、上述の一瞬より長時間、細菌に60℃以上の温度が暴露される可能性も考えられる。そのため、タンパク質が変性することによる細菌の死滅も十分に考えられる。
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