本年度は、Er:YAGレーザーの根管象牙質中のLipopolysaccharide(LPS)に対する抗LPS作用について検討を行った。 試料として、ヒトの抜去歯歯根6本を用いた。歯根を歯軸と平行に割断し、その割断面を研磨、清掃後にオートクレーブ滅菌を行った。その後LPS溶液(Escherichia coli: O111-B4; SIGMA社製)に2週間浸漬してLPSを浸透させ実験試料とした。試料を移動ステージに固定、歯質が切削されないようにレーザーのチップと試料を140μm離してから、表示出力25pps・30mJ、移動速度1mm/s、往復回数10回の条件でレーザー照射を行った。照射後、レーザー照射部を中心に断面積が約1平方ミリメートルの四角柱になるように試料を切断し、金属棒に接着、固定した。固定した試料をMikrokatorに装着し、abrasive micro-sampling法にて根管側からセメント質側へ、100μmごとに500μmまでの5層の象牙質粉を採取した。コントロール群として、レーザー未照射の試料からも同様に象牙質粉を採取した。LPSの抽出はエンドスペシーを用い、吸光度測定から定量した。吸光度の測定は、分光光度計マイクロプレートリーダーで波長405nmにて測定した。 各層におけるレーザー照射群のLPSは、コントロール群と比較して表層から400μmの層までは減少しており、表層から100μmの層において、両者間には有意差(p<0.05)が認められた。 以上の結果より、根管表層から100μmまでは、レーザー照射に伴う熱による直接作用,あるいはLPSとともに混在するタンパク質の変性により、LPSが有意に減少したと考えられた。 Er:YAGレーザーの根管拡大形成が可能な条件での根管内照射は、根管の拡大形成と同時に,LPSに対しても有効的に作用することが示唆された。
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