研究概要 |
近年,ジルコニアオールセラミック修復の需要が高まりつつある中,この修復方法の問題として,ベニヤポーセレンのチッピングが指摘されるようになってきた.発表者らはその原因を,フレームに用いるジルコニアの熱伝導率が金属と比べ非常に低い(Auの約1/80)ことやジルコニアの熱容量が大きい(Auの約5倍)ことから,ジルコニアフレームの厚さやベニヤポーセレンの焼成条件によってポーセレンの焼成不足や欠陥が生じるためではないかと考え,焼成条件の違いがベニヤポーセレンの強度に及ぼす影響について検討を行った. ジルコニア試料およびメタルセラミック試料それぞれ,10mm×15mm×0.8mmのフレームを製作し,M(マニュアル指定の温度),H(マニュアル指定より50℃高い温度),L(マニュアル指定より50℃低い温度)の3条件の焼成温度でポーセレンを築盛・焼成し,ベニヤポーセレン全体の厚さが計3mmとなるようにした.強度の測定はJIS R 1607に準じ,破壊靭性試験を行った.ビッカース硬さ試験機(AKASHI MVK-H2)を用いて,ベニヤポーセレン部分のフレームからの距離が0.5mm,1.0mm,1.5mm,2.0mmの地点を計測点とし,各地点6箇所(計24箇所)に圧痕を付け破壊靭性値を算出した.ジルコニア試料の破壊靭性値は,1.11~1.46の範囲内であり,メタルセラミック試料では1.53~1.65の範囲内であった.ジルコニア試料の破壊靭性値は,メタルセラミック試料よりも有意に低い値を示した(p<0.05). 本実験の結果から,ジルコニアオールセラミック修復用ベニヤポーセレンにおけるチッピングの原因は,ジルコニア修復用ベニヤポーセレン自体の強度がメタルセラミック修復用と比較して低いためではないかと考えられた.しかしながら,焼成温度がベニヤポーセレンに影響を与える可能性も示唆された.
|