研究概要 |
構造的に脆弱になった歯根にグラスファイバーポストを適用した場合、歯根破折を生じることがある。そのために残存歯質が薄くなった歯根に対して一般に認知されている手法通りの支台築造を行うことは疑問が残る。 そのため本年度はまず単独支台歯への支台築造に着目し、歯根破折を起こしにくい、すなわち機能時に歯根象牙質に大きな応力集中を生じにくい築造用材料について考察することとし、研究指導をした大学院生が以下の雑誌論文を発表した。(Kumagae N et al. Inf1uence of the flexural modulus of prefabricated and experimental posts on the fracture strength and failure mode of composite resin cores: Dental Materials Journal, 31(1), 113-9, 2012) この研究では、歯根象牙質よりも弾性係数の低い試作ポストを用いた際の築造体の破壊強度を、従来のグラスファイバーポストを用いた場合の破壊強度と比較し、有意な差がなかったことを報告している。 また、学会発表として、菲薄な根管壁をコンポジットレジンで補強し、メタルコアによる支台築造を行う方法について報告した。(Fukui Y. New core buildup method using composite resin: The 1stTtri-University Consortium on Oral Science and Education, Bangkok, Thailand, 2011.) これらの知見は、単冠修復よりも大きな応力がかかるブリッジの支台歯にとっても重要なである。根管壁の薄くなった歯をブリッジの支台歯とするのは不安の残る処置であるが、最適な方法を模索することで、より予見性の高い歯科治療を提案できれば、医療者、患者双方にとって有益であると考えられる。
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