研究概要 |
メカニカルストレスは歯根膜線維芽細胞や骨芽細胞における破骨細胞誘導因子の発現を調整し,歯周組織での破骨細胞の分化・誘導に関わる重要な因子として考えられている。メカニカルストレスによる破骨細胞誘導経路の検索は、in vitroにおいては細胞伸展装置などを用いて荷重を付与し、その際の遺伝子、タンパク質の発現を分析する方法による。しかしながら歯周組織には多種多様な細胞が混在し、in vivoの複雑な歯周組織の環境を再現することは困難であり、in vitroの結果を検討するための実験動物モデルも存在しなかった。 そこで、我々はラット臼歯に咀嚼力を想定した規格化された繰り返し荷重を付与するための装置を開発し、異なる荷重が歯周組織の破骨細胞誘導に与える影響を検討した。荷重量の基準はラット咀嚼力を推定し、第一臼歯に100、150、200%の荷重量を付与し、荷重の頻度はラット咀嚼時のサイクルを想定し、5.8Hzとした。荷重付与後、1日目、3日目、7日目の組織切片を観察したところ150%、200%荷重付与した群において3日目、7日目に歯周組織に著明な破骨細胞の誘導を認めた。したがって我々の開発したシステムを用いて、メカニカルストレスが破骨細胞を誘導する際の反応をin vivoにて観察できる可能性を示唆している。 さらに我々は,破骨細胞誘導初期を検討するために,荷重付与後2日目の組織学的検討を加え,歯周組織に破骨細胞の誘導を認めた.次いで,破骨細胞誘導に関わるシグナリングカスケードを解明するために,荷重付与後1日目,2日目に対象歯を抜歯,歯根膜を回収し,遺伝子の解析を行っている.
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