研究概要 |
本研究の目的は神経堤幹細胞の同定法を応用し、ヒト歯根膜細胞より神経堤幹細胞を分離抽出し、セメント質/歯根膜複合体の再生を期することである。これまでのところ神経堤由来細胞を追跡可能な遺伝子改変マウスであるWnt1-Cre/ZEG,PO-Cre/ZEGマウスにを用いた組織標本上におけるin vivoの解析において、神経堤幹細胞マーカーであるNGFR/p75,CD57/HNK-1,Nestinが神経堤由来細胞においてて高頻度で陽性であることを確認している。研究の過程においてこれまでに同定された歯周組織に由来する間葉系幹細胞として同定された細胞集団の中には一部、神経堤幹細胞を含んでいる可能性が示唆され、これらの結果については英文学術雑誌投稿の準備を進めている段階である。 さらに神経堤幹細胞をin vitroにおいて選択的に培養することのできるニューロフィア法をヒト並びにマウスの歯根膜から得た細胞を用いて試み、各種培養条件(増殖因子の濃度、カルチャーディッシュ底面のコーティング)がニューロフィアの形成に大きく影響することを見いだしている。しかしながら長期培養ではその生存率が著しく低下することからさらなる培養条件の検討が必要であると考えている。またこれらの細胞群が真に幹細胞能を有する事への評価については、現在解析中である。 本研究は、歯根膜から従来の間葉系幹細胞ではなく、分化度から見てより上流にあると考えられている神経堤幹細胞を分離、同定しようとするものである。我々が本研究において目指すセメント質/歯根膜複合体の再生は咬合力を歯根膜によって負担することを可能とする次世代インプラントの実現に不可欠なものであると位置づけられるものである。
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