研究概要 |
本研究の目的は神経堤幹細胞の同定法を応用してヒト歯根膜細胞より神経堤幹細胞を分離抽出し、セメント質/歯根膜複合体の再生を期することである。神経堤由来細胞を追跡可能な遺伝子改変マウスであるWnt1-Cre/ZEG,P0-Cre/ZEGマウスを用い、組織標本上にて神経堤細胞マーカー、神経堤幹細胞マーカー、間葉系幹細胞マーカーの発現検索を行った。歯根膜中でGFPによって標識される神経堤由来細胞は約0.4%認められた。更に神経堤細胞マーカー、神経堤幹細胞マーカー陽性細胞ははGFP陽性細胞中においてのみ観察された。一方、間葉系幹細胞マーカー陽性細胞はGFP陰性細胞中においてのみ観察され、これらの細胞は血管近傍において認められた。以上の結果より歯根膜中において神経堤由来幹細胞が存在することが示され、この細胞群はこれまでに知られている間葉系幹細胞とは異なる幹細胞群である可能性を示唆するものであった。 更にヒト歯根膜由来細胞をFGE,FGF-2存在下にてニューロスフィア法にて浮遊培養を試みたところ、初期には浮遊細胞塊を生じたが、7日以上の長期培養は不可能であった。歯根膜由来細胞のニューロスフィア法については更なる培養条件の検討が必要である。ニューロスフィア法による培養が困難であったため、ヒト歯根膜細胞からの神経堤幹細胞の分離に至らなかった。従って、歯胚再生に関する実験は行なっていない。現在、ニューロスフィア法に代わる細胞の選択的分離法として、非接着性の培養皿上における浮遊培養法を試みている。更に我々が組織上で検討した各種細胞マーカーを用いて、歯根膜細胞中に存在する異なる幹細胞群の特性評価について解析を行なっている。
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