慢性疼痛患者は増加しており、難治性であるために患者、医師ともにその治療には苦慮している。身体の痛み、心の痛み、社会的な痛み、霊的な痛みの4要素を頭に入れて治療しなければならず、慢性疼痛の治療には精神的なケアも含めた全人的な治療が必要であるといわれているが、個人の経験や勘によるところが大きく、客観的な指標がないため、治療には時間を要することが多く、そのことによる社会経済学的損失も大きいのが現状である。本研究は、視覚的に痛みの客観的データを慢性疼痛患者にフィードバックすることで、疼痛認知の歪みをより明確に学習させ、新たな認知行動療法的アプローチを試み慢性疼痛治療の治療に役立てることである。本年度は、慢性疼痛患者と比較する為に、慢性疼痛を持たない健常者に対して、温度刺激による痛覚閾値とVASの評価および両者の相関を検討した。慢性疼痛を持たない健常者において、温度刺激による疼痛閾値とVASの評価はほぼ相対的に増加していることが明らかとなった。つまり、慢性疼痛を持たない健常者においては疼痛認知の歪みがないことが、示唆された。 本年度の研究結果は、痛覚閾値とVASによる慢性口腔顔面痛に対するバイオフィードバック療法の確立をするにあたり、有用な知見となる。
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