研究概要 |
歯槽堤の欠損を再生することはインプラント、義歯治療の成功に大きく関わっているが、歯槽堤増成術後の骨組織は炎症作用によって吸収されてしまうという課題がある。本研究代表者はこれまでに合成ペプチドSVVYGLRが血管新生作用、骨再生促進作用を有することを報告してきた。歯槽堤における炎症反応には破骨細胞が大きく関与しており、機能性ペプチドSWYGLRが破骨細胞に及ぼす影響を検討することは、骨組織再生時の炎症反応を理解するうえでも重要と考えられる。近年、破骨細胞の形成にはインテグリンα9β1が深く関与していることが報告されている。本研究計画では、前年度までにマウス破骨前駆細胞をRANKLで刺激して分化誘導すると、細胞分化に伴いインテグリンα9の発現が増加し、一方で機能性ペプチドSWYGLRを破骨細胞に作用させるとこの発現が抑制されるという知見を得た。また、接着実験の結果、SVVYGLRはインテグリンαvβ3とも特異的に結合することが明らかとなり、このペプチドが破骨細胞上のインテグリンα9β1、αvβ3のふたつのインテグリンに結合することで破骨細胞の分化に影響を与える可能性が示唆された。本年度は、このペプチドが破骨細胞の炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,1-8など)の発現に及ぼす影響の検討を、リアルタイムPCRを用いて行ったが、用いた10-100ng/mlの濃度では著明な促進あるいは抑制作用は検出されなかった。今後、機能性ペプチドSWYGLRが炎症に関与する他の細胞に対してもどのような作用を及ぼすかを検討していく必要があると思われる。
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