研究概要 |
本研究は、食品のテクスチャーが咀嚼・嚥下時の舌運動や筋活動に与える影響について解析し、食品のテクスチャーに関する至適範囲を設定することで、各個人の嚥下能力に応じた食品、特に嚥下食のテクスチャーデザインのための評価システムを構築することを目的とする。この評価システムに基づき、テクスチャー改良剤としての増粘多糖類の組み合わせや使用量を最適化することで、咀嚼・嚥下能力に合せた様々な食品を容易に調製できるようになり、摂食補助を通じた高齢社会における食の安全・安心に貢献できるものと期待される。本研究では、まず食品のモデルとして、増粘多糖類を用いた6種類の試験食品製作を行った。食品テクスチャー評価には機器測定で物性の評価を行った後、官能評価(VAS)を用いて「飲み込みやすさ、つぶれやすさ、残留感、まとまり」等に関する主観的評価を行った。それらに加えて、舌運動(舌圧)および嚥下関連筋活動の生体計測による客観的評価を健常者8名に対して行った。これらの多面的な試験食品評価から、被験食品の口腔内での"まとまり感"と"硬さ"が舌圧パラメーターと関係する傾向がみられた。すなわち、テクスチャー(付着性・凝集性・硬さ)を段階的に変えた試験食品別に、健常者での嚥下時舌圧最大値・舌圧発現持続時間に一定の傾向が見られた。 この結果は、個人の嚥下能力に応じた嚥下食のテクスチャーデザインのための評価システムを構築するための基礎になると考えられ、この評価方法が実用化できれば、将来的に、患者の嚥下能力に応じた「安全に摂食できる食」の開発,更には食品添加物としての増粘多糖類の選定に貢献することができると考える。
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