研究概要 |
本研究は,嚥下障害に対する舌接触補助床(以下PAP)の効果を明らかにするため,PAP装着者の嚥下機能の客観的・主観的評価と舌圧との関係について分析を行うこととした.本研究では,以下のような段階的目標を立てた.1.PAPと舌との接触状況を舌圧センサシートを用いて測定し,健常者の舌圧発現パターンを照らしてPAPの形態評価を行う.2.PAPを装着した舌腫瘍患者の嚥下機能を客観的・主観的に評価する.3.PAPの効果が不十分であると判断された患者には,舌圧測定の結果をもとに調整を行い,効果向上につなげていく.4,PAP装着から6ヶ月を限度に,PAPの効果に影響を及ぼすと考えられる因子について.舌圧を含めてレトロスペクティブに分析する.これらの段階的目標の中,現在.1,PAPの形態評価と2.嚥下機能の客観的・主観的評価を行っている段階である.平成23年度現在.大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科に受診した舌腫瘍患者は6名.そのうち,日本老年歯科医学会ガイドラインによりPAPが適応とされた患者は2名であった.これらに対して,舌圧測定を行いながら術後PAPを製作した.結果,2名とも嚥下機能の改善は認めているものの,患者数が少なく,十分なデータを集積していない.現状では,欠損部位の大きさが大きく.また術後早期の段階で,PAPの効果は大きい傾向が認められた.まだデータ数が不十分であるため,嚥下機能の客観的・主観的評価と舌圧との関係を明らかにするには至っていない.今後引き続き,患者の経過を追うとともに,評価とデータ収集を行っていきたいと考えている.
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