舌腫瘍術後患者を対象として、舌接触補助床(以下PAP)による嚥下機能の客観的・主観的評価と舌圧との関係について分析することを目的として、研究を開始した。対象人数が、当初予定した人数よりも少なかった。2年間での舌腫瘍術後患者は5名に過ぎず、また症例によって、PAPの適応でなく、結果、縦断的に経過を終えたのは、3名にとどまった。その中の1例を上げて説明する。舌腫瘍術後で、かつ上顎腫瘍術後の患者で、嚥下障害を主訴に紹介された。口蓋部は腫瘍時切除後皮弁再建されており、大きく下垂していた。また、舌の機能障害を顕著で、嚥下障害を認めた。申請者は、舌機能障害を評価するために、舌圧センサシートを使用して舌の口蓋への接触について調べた。その結果、口蓋部の正中前方部、中央部、後方部と左右2か所の合計5か所のセンサは全く反応せず、つまり、口蓋に舌が接触していないことが分かった。この対象者にPAPを製作した。当初立てた仮説に基づいて、前方部での接触をまず付与し、その後後方へ順序性を伴った接触様相になるように口蓋部の形態を形成した。仮説に基づいた様相を十分に表現できなかったが、これにより、主観的評価として、嚥下のしやすさが向上した。また、客観的評価として、発音の効果もみられた。30日ごとの評価の中で製作してから30日後の効果が顕著にみられたが、その後の変化は明らかではなかった。PAPの効果が得られなかった群を、本研究期間中に絞ることができず、PAPの効果に与える影響を十分に分析できていないのが現状である。
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