近年インプラント治療は急速な普及を見せている中で、そのさらなる適応拡大や生存率の向上を目的に、様々な材料やシステムが開発されている。一般的に、生物は応力負荷状態によって骨量を維持している(骨形成が活性化されている:Wolffの法則)ことが知られている。しかし、歯科臨床では義歯床下の歯槽骨や応力のかかったインプラント周囲骨が吸収することがよくあり、応力は骨に対してネガティブなものとしてとらえられているのが現状である。このように応力と骨の関係には解明されていないことが多いことから、メカニカルストレスの受容機構と骨リモデリング現象を詳細に解析する必要がある。特にmechanostat cellと考えられている骨細胞に着目し検討することとした。 ラット口腔内上顎臼歯を抜歯し、インプラントを埋入した。非荷重(咬合しない、応力がかからない)、適正荷重(咬合面と同様の高さ)、過度荷重(過度な応力がかかる)のそれぞれの応力がかかるインプラントモデルを作製し、インプラントを埋入し1週、2週、4週間後に屠殺し、組織学的計測を行った。骨細胞に着目し、経時的にインプラント周囲骨の骨細胞がインプラントにかかる応力の違いによりマイクロクラックを形成するか、その量を蛍光染色にて観察した。1週間後、各群インプラント周囲に新生骨の形成が認められた。周囲骨はまだ幼若で類骨が多く、成熟した骨細胞は観察されなかった。2週間後、それぞれの群にインプラント周囲に新生骨の形成が認められ、周囲骨の石灰化も認められたが、骨細胞は認められなかった。4週間後、インプラント周囲の新生骨の多くが石灰化されたのが観察された。荷重群は骨細胞も観察され、マイクロクラックも観察されたが、その量に有意な差は認められなかった。
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