マウスガード装着が体幹四肢の筋力発揮時に顎口腔系に及ぼす影響を検討した。被験者は顎口腔系に異常を認めず、顎関節に既往および現病歴のない個性正常咬合を有し、体幹四肢の運動機能に異常を認めない健常男性とした。マウスガードは各被験者が練習および試合時に使用している厚さ2ミリのポリオレフィン系軟性シートを二層ラミネート加圧成形した厚さ4ミリのカスタムメイドマウスガードを使用した。体幹の伸展・屈曲運動には、多用途筋機能評価訓練装置BIODEX SYSTEM3を使用した。被験咀嚼筋として、左右両側側頭筋前部筋束、咬筋浅部、および顎二腹筋前腹を選択した。咀嚼筋筋活動量の測定には、マルチテレメーターシステム(WEB-5000)を使用し、電極は直径5ミリの双極表面電極を用いた。導出された筋電図信号は波形解析ソフトPowerLabに取り込み、サンプリング周波数1kHzとしてパーソナルコンピュータに記録した。また、咬頭嵌合位における最大随意噛みしめ時の側頭筋および咬筋の筋活動量と下顎骨正中下縁に両手の拇指をあてがい、頭位が後屈しないように最大随意開口抵抗を試みた時の顎二腹筋の筋活動量を計測し、これを最大随意筋活動量とした。各運動時の各筋における左右両側の実効値の平均を算出した。マウスガード装着・非装着における伸展と屈曲運動間の各咀嚼筋の筋活動量について検討した。結果は、マウスガード装着時の体幹伸展・屈曲運動時における筋活動量は、全ての筋においてマウスガード非装着時と比較して有意に小さかった。以上よりスポーツパフォーマンスを発揮するために大切なのは、咀嚼筋を使ってその時の体勢や状況に最も適した位置に下顎を固定することと思われ、単に咬頭嵌合位で強く噛みしめているのではなく、マウスガードが下顎の固定に役立っていると思われる。以上よりマウスガードが咀嚼筋の疲労軽減に有益であることが示唆された。
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