研究概要 |
本研究は活性酸素を利用し歯科材料への新たな消毒方法を確立することを目的とする。義歯床用レジン材料を用い、消毒方法の違いが材料の表面性状や物性に与える影響、ならびに各消毒後の材料表面への細菌付着状態の観察を行った。すなわち、活性酸素による消毒法と歯科医療現場で主に使用されている70%アルコールおよび5%次亜塩素酸水溶液による薬液消毒について比較検討した。試験項目は、床用レジンからの残留塩素濃度の測定、3点曲げ試験における機械的強度試験、表面粗さ試験、表面形状の観察を行い、さらに、カンジダアルビカンズを用いた消毒後の細菌付着状態の観察を行った。 今回新たに見出されたことは、次亜塩素酸水溶液消毒では消毒後十分に洗浄したにも関わらず材料内に塩素が残留し溶出することが確認されたが、活性酸素による消毒方法では検出されなかった。機械的強度試験においては,次亜塩素酸水溶液消毒では未処理と比較し有意な材料強度の低下を認めたが、活性酸素消毒では有意な差は認められなかった。表面粗さ試験では、次亜塩素酸水溶液消毒において、未処理と比較し算術平均粗さが有意に増加していたが、活性酸素消毒では有意な差は認められなかった。走査型電子顕微鏡による表面形状観察では、次亜塩素酸水溶液消毒において材料表面の粗〓化が確認されたが、活性酸素消毒では大きな変化は認められなかった。各消毒後の細菌付着状態にも違いが見られ、活性酸素消毒では独立した細菌の付着が観察されたが、次亜塩素酸水溶液による消毒後の細菌付着数は増加し、凝集する傾向にあった。以上の結果より、今回使用した活性酸素による消毒方法は、材料物性及び表面性状に対する影響を最小限にすることができ、消毒後の細菌付着においても影響がなく有益な消毒方法であることが示唆された。
|