研究課題
【緒言】骨格筋における蛋白質の分解は主にユビキチン・プロテアソーム系およびオートファゴソーム・リソソーム系によって行われている。この二つの分解系はインスリン様増殖因子(IGF)→IGF受容体I(IGFRI)→シグナル伝達因子Akt1→転写調節因子Fox03を介して調節されている。老化に伴い顕著な筋萎縮が起きるとはよく知られているが、老化による筋萎縮における、この二つの分解系の働きや調節機序については明らかになっていない。本研究においては、老化促進マウス(Klotho)の咬筋、舌筋、腓腹筋におけるこの二つの分解系の働きについて調べた。【材料と方法】実験には4週齢のKlotho及び野生型マウス各5匹を用いた。咬筋、舌筋、腓腹筋を摘出し、湿重量を測定した。Western blotting法によりこれらの筋におけるIGFRI、Akt1、Fox03のリン酸化フォーム、オートファゴソーム・リソソーム系のマーカーであるIC3、Gabarap、ユビキチン・プロテアソーム系のマーカーであるMAFbx、MuRF1の発現について調べた。【結果】Klothoマウスの咬筋、舌筋、腓腹筋の湿重量は、正常マウスと比較して、それぞれ59%、33%、68%という顕著な減少を示した(p<0.01)。IGFRI、Akt1、Fox03のリン酸化フォームおよびMAFbx、MuRF1の咬筋、舌筋、腓腹筋における発現についてはKlotho及び野生型マウスの間で有意な差異は認められなかった。Klothoマウスの咬筋、舌筋においてGabarapの発現量が正常マウスと比較してそれぞれ249%(P<0.05)、279%(p<0.01)の増加が認められた。【考察】以上の結果からKlothoマウス咬筋、舌筋における筋萎縮にオートファゴソーム・リソソーム系が機能している可能性が示唆された。
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