研究課題
本年度はKlotho老化モデルマウスの咬筋、舌筋におけるオートファゴソーム・リソソーム(オートファジー)系を調節している経路の探索をおこなうとともに、自然老化ラットにおいても同様なことが起きているかを確かめる実験を行う予定であった。しかし、実際にはKlotho老化モデルマウスにおけるオートファジー系の調節経路を明らかにする実験を主に行うとともに、自然老化ラットの筋標本の採取を行った。4週齢のKlothoマウスおよび野生型マウスを安楽死させ舌、咬筋、腓腹筋を摘出し蛋白質を分離・精製した。Western blotting法を用いて、これらの筋におけるIGFシグナル伝達因子(IGF受容体、Akt、FoxO3)のリン酸化レベルおよびmTORシグナル伝達経路の下流の構成因子(4E-BP1、S6K)のリン酸化レベルを解析した。IGFシグナル伝達経路のマーカーは調べた3種類の筋において、Klothoマウスと野生型マウスの間で統計学的な有意差は認められなかった。mTOR下流のシグナル伝達因子である4E-BP1、S6Kのリン酸化レベルは、Klothoマウスの咬筋では約50~60%(p<0.01)、舌筋で40~45%(p<0.01)、野生型と比較して低下していたが、腓腹筋ではKlothoマウスと野生型マウスの間で統計学的な有意差は認められなかった。以上の結果よりKlothoマウスの咬筋と舌筋におけるオートファジー系の活性化にはIGFシグナルではなく、直接mTORを介する経路が関与していることが示唆された。咬筋や舌筋では咀嚼、嚥下、呼吸などの生存のために必須な活動に関与しているため活発に活動し、腓腹筋と比較してアミノ酸不足が起こっていたためmTORを介してオートファジーが活性化されたことが推測される。
3: やや遅れている
本年度はKlotho老化モデルマウスの咬筋、舌筋におけるオートファジー系を調節している経路の探索をおこなうとともに、自然老化ラットにおいても同様なことが起きているかを確かめる実験を行う予定であったが、実際にはKlotho老化モデルマウスにおけるオートファジー系の調節経路を明らかにする実験はほぼ終了したが、自然老化ラットの実験は筋標本の採取を行うことができたのみである。従って、(3)やや遅れているとの自己評価になった。
来年度は自然老化ラットをもちいて舌、咬筋の萎縮のメカニズム、および萎縮のメカニズムにおけるオートーファジー系、ユビキチン・プロテアソーム系の機能を明らかにするための実験を行う。
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