我々はこれまでにナノハイドロキシアパタイトの含有量の異なるナノハイドロキシアパタイト-コラーゲン複合体(以下nHAC)を精製し、BMP-2を併用した場合、nHpの含有量が多いほど早期にBMP-2の骨形成効果を高めることを報告してきた。 しかし、歯周組織はセメント質、歯根膜、歯槽骨、歯肉結合組織など多数の異なる組織によって形成される器官であり、多様な組織の再生が必要とされる。 そこで、ラット大腿筋内に、異なる濃度のBMP-2溶液に含浸させたnHAC膜もしくはコラーゲン膜に脱灰処理された象牙質片を付着させて移植し、組織学的観察を行った。結果、nHAC膜群では低濃度のBMP-2群で早期に有意にセメント質様硬組織が象牙質上に観察された。このことから、nHAC膜をBMP-2と共に使用すると、nHACからnHpが分解、拡散することで局所濃度が高まり、低濃度BMP-2でも象牙質上に有利に硬組織を形成させると考えられた。 一方、実験操作中に膜が象牙質片から離れることが多かったことから、膜に接着性を持たせることを検討してきた。これまでに架橋剤の変更や生体接着剤を添加して物性を検討したところ、いずれにおいても乾燥状態では象牙質と付着するものの、湿潤状態では付着させることは困難であった。しかし、その中でEDC架橋したnHAC膜にフィブリン生体接着剤を添加した場合、湿潤状態の膜が弾性を持つことが判明した。 外力により歯、歯槽骨、軟組織が別々に動かされる歯周組織においては、材料が弾性の特徴を持つことは、scaffoldとして有利な機能である。nHACをブロック状に精製し、物性を検討したところ、EDC単独に比べて2倍の弾性を持つことが判明した。また組織学的観察を行ったところ、生体親和性、生体分解性に優れ、BMP-2の担体としても有効であることが観察された。
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