将来的にはiPS細胞からの歯牙再生を行うため、初期課題としては、iPS細胞の未分化培養技術・細胞回収技術・分化制御技術などの基盤培養技術の発展が欠かせない。本研究では、1つの容器内でiPS細胞の様々な制御が可能なカーボンナノチューブ(CNT)コート細胞培養基材の開発を最終目的とした。 本年度は主に、単純形状のパターニングしたCNTコート電極付きシリコーンチャンバーの作製、iPS細胞の未分化培養、誘電泳動(交流電場)によるiPS細胞の集積を行った。CNTコートによるパターン化においては、電極間距離が200μm~1mm櫛形電極の透明導電性薄膜作製を達成できた。これにより、センサーや刺激装置など目的に応じた装置作製が可能となったことを示している。マウスiPS細胞の未分化培養においては、CNTの種類の選択およびコート量を調節することにより、未分化培養に有利な条件を見出すことに成功した。このことは、iPS細胞培養の初期における未分化状態をCNTコート量により調節することが可能であることを意味しており、その後の分化誘導段階を効率よく実行できる可能性を内包している。さらに交流電場による細胞集積を検討したところ、最適な電極間距離および交流電場条件を規定することにより、電極間へのパールチェイン構造を持った細胞集積が観察された。このことは、iPS細胞の集積・配列・選別等の細胞操作(マニュピュレーション)が可能であることを示している。 以上、本年度計画したチャンバーの作製、iPS細胞の未分化培養、交流電場における細胞集積を達成することができた。
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