将来的にはiPS細胞からの歯牙再生を行うため、初期課題としては、iPS細胞の未分化培養技術・細胞回収技術・分化制御技術などの基盤培養技術の発展が欠かせない。本研究では、1つの容器内でiPS細胞の様々な制御が可能なカーボンナノチューブ(CNT)コート細胞培養基材の開発を最終目的とした。 前年度までに得られた結果より、iPS機能制御のためにはCNTパターニングの形状に大きく依存することが判明した。よってiPS細胞の制御において挙げられる重要課題がCNTコートのパターニングであるため、本年度はパターニング法の重点的な検討を行った。 はじめに金属薄膜やシリコーンゴムを用いてマスクを作製し、CNT分散液を塗布し乾燥させる方法にてパターニングを検討した。その結果、比較的、濃いパターン形状が得られ十分な電気伝導度が得られたものの、作製できる形状に制限があることが分かった。次に、粘性のあるものを印刷できるスクリーン印刷でのパターニングを検討したところ、パターン形状は比較的自由度が高いものの、詳細なパターンを得るのが困難であることが分かった。汎用のインクジェット小型プリンターのインクタンクを改良し、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の分散液を加え、印刷によるパターニングを検討した。その結果、自由度の高いパターン形状が得られたが、一回の印刷では薄く、好ましい電気伝導度は得られなかった。しかしながら、繰り返し印刷することにより、十分な電気伝導度が得られることが分かった。これにより、自分で設計したCNTパターンが、安価な機器により印刷により自由度の高いパターニングができるようになった。 以上より、これらの成果により、CNTをパターン化した培養容器内でのiPS細胞の機能制御も容易になると考えられる。
|