口腔内細菌によるバイオフィルム形成を抑制する機能を持つ、インプラント用チタン合金の開発を目的とし、従来の研究成果を基にチタン銀合金を設計した。合金設計に従い、チタン銀合金インゴットを試作した。平成22年度は、実験動物への埋入試験に用いる試作インプラント体の作製を行った。また、チタン銀合金は銀を含む合金なので、硫化しやすいことが懸念され、硫化ナトリウム水溶液における変色試験を行った。 試作インプラント体の作製:チタン銀合金インゴットを円柱状に鋳造した後、精密小型旋盤で機械加工して、チタン銀合金製インプラント体の作製を試行した。チタン銀合金は純チタンより研削性と切削性に優れており、試作インプラント体の作製は旋盤加工で可能なことが分かった。引き続き実験動物への埋入試験を行う予定であるが、チタン銀合金と純チタンでは同じ条件で加工しても表面粗さが異なるため、表面仕上げ状態について現在検討している。 変色試験:JIS T 6002に従い、表面を800番まで研磨仕上げした板状試験片を、37℃の0.1%硫化ナトリウム水溶液に全浸漬し、72時間静置した。浸漬前後の試験片のL^*a^*b^*値を色彩色差計で測定し、色差(ΔE^*_<ab>)を算出した。チタン銀合金のΔE^*_<ab>値は、純チタンと比べて有意差は認められなかったが、銀の添加量の多いものほど小さい傾向を示した。純銀は表面に硫化銀を形成し、著しい変色を示した。チタン銀合金の硫化ナトリウム水溶液における耐変色性は、純チタンと同等以上であることが分かった。
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