口腔内細菌によるバイオフィルム形成を抑制する機能を持つ、インプラント用チタン合金の開発を目的とし、従来の研究成果を基にチタン銀合金を設計した。合金設計に従い、チタン銀合金のインゴットをアルゴンアーク溶解炉で溶製した。平成23年度は、塩化ナトリウム水溶液、乳酸水溶液、ポビドンヨード溶液における変色試験を行った。 チタン銀合金、純チタン、純銀、Ti-6Al-7Nb合金、12%金銀パラジウム合金の板状試験片を作製した。JIST6002に従い、表面を800番まで研磨仕上げした板状試験片を、37℃の試験溶液50mlに全浸漬し、72時間静置した。試験溶液は、0.9%塩化ナトリウム水溶液、1%乳酸水溶液、15倍希釈ポビドンヨード溶液とした。浸漬前後の試験片のL^*a^*b^*値を色彩色差計で測定し、色差(ΔE^*_<ab>)を算出した。また、浸漬前後の試験片について、X線回折試験を行った。塩化ナトリウムと乳酸への浸漬では、いずれの試験片にも著しい変色および劣化は認められなかった。ポビドンヨードへの浸漬では、純銀と金銀パラジウム合金が黄緑色もしくは黒色に変色し、試験後にヨウ化銀のピークが検出された。一方、チタン銀合金においては著しい変色は見られず、チタン銀合金のΔE^*_<ab>値は、純チタンと比べて有意差は認められなかった。X線回折でもヨウ化銀のピークは認められなかったことから、チタン銀合金の表面は、チタンの不動態皮膜によりヨウ化から保護されていると考えられた。チタン銀合金の耐変色性は、各溶液において純チタンと同等であることが分かった。
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