本研究は、インプラントの埋入が骨吸収を抑制するとの報告から、インプラント埋入を行うことで、骨吸収抑制の分子生物学的なメカニズムを解明し、顎骨の保存を目的とした臨床への応用を目指したものである。当該年度においては、インプラント埋入による周囲骨の骨動態の評価を行った。チタン製インプラント(2mm×2mm)をラット頚骨に埋入し、術後1から12週における除去トルクを経時的に計測した。また、血清中の骨形成マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)、骨吸収マーカーであるI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)もあわせて計測し、骨動態の評価を行った。さらに、インプラント周囲の組織形態学評価も行った。インプラント埋入後、術後経過にしたがって除去トルクの増加が認められ、12週でプラトーに達した。また、BAP、NTxともにインプラント埋入を行っていないコントロールと比較して8週までに有意な差を認めた。12週ではコントロールと比較して差は認められなかった。これらのことから、インプラント埋入により、骨形成が促進されるのみならず、骨吸収が抑制されることがあきらかとなった。また、BAPやNTxのようなバイオマーカーとインプラントのオッセオインテグレーションの指標である除去トルクは、同様の傾向を持って変化しており、これらのことからこうしたバイオマーカーを用いることでインプラント周囲の骨の状態やインプラントそのものの状態を診断できる可能性が考えられた。
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