本研究は、脳由来神経栄養因子(BDNF)/高分子ピアルロン酸複合体の歯周組織再生治療薬としての臨床応用を達成するために、(1)BDNFによる歯周組織再生の詳細なカスケード、(2)BDNFによる歯周組織再生における個体の感受性を解明していくことを目的とした。本年度(1)に関しては、現在実験的歯周炎を惹起させたビーグル犬III級根分岐部歯周組織欠損モデルを用いてBDNF(50μg/ml)/高分子ピアルロン酸複合体投与1週間後のサンプルを現在脱灰中である。脱灰終了後速やかに、HE染色、BDNFの受容体trkB、細胞増殖マーカーであるPCNAの免疫染色を行っていく。BDNF(50μg/ml)/高分子ピアルロン酸複合体投与2週間後のサンプルに関しては組織観察まで終了した。HE染色では、投与2週間後において歯周組織再生はまだ十分ではないが、著しい炎症性細胞浸潤や根分岐部直下への上皮細胞の浸潤は認められなかった。BDNF受容体であるtrkBの免疫染色では、欠損底部付近の結合組織中や欠損部象牙質付近の結合組織中にtrkB陽性細胞が観察された。(2)BDNFによる歯周組織再生における個体の感受性の解明に関しては、trkB受容体遺伝子多型の相関解析のために、智歯抜歯時に患者から歯と歯周組織の提供を受け、細胞分離、培養、凍結保存を行なった。同一個体からの、歯周靭帯細胞、歯肉線維芽細胞、歯肉上皮細胞を分離・培養、凍結保存を6個体において行った。研究期間を通して10個体のゲノムDNAを獲得した。アルツハイマー病との関係が示唆されている3つのtrkBのSNP(rs1624327、rs1443445、rs3780645、Zuomin Chen et al.2008)に関して、StepOne Realtime PCR Systemを用いたSNP解析を行った。
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