研究概要 |
現在、歯周組織欠損に様々な骨移植材を足場材とした骨移植術、組織再生誘導法、エナメル蛋白(EMD)や各種成長因子の応用が歯周組織再生療法として報告されている。これまで我々はイヌ2壁性骨欠損においてEMDもしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)とリン酸三カルシウム顆粒(TCP)の併用により良好な歯周組織再生が獲得されること、EMDとbFGFでは歯槽骨、セメント質に対する反応性が異なること、さらにTCPの吸収速度のコントロールが重要なことを明らかにした。しかし予知性が最も低い1壁性骨欠損では比較的安易に迅速に回復できる歯周組織再生療法の確立が強く望まれる。TCPは高い生体親和性、骨伝導能を有するが、吸収速度が遅く狭小な欠損ではむしろ残留TCPが組織再生を遅延させる可能性が示唆された。そこで今回、抗原性が低く創傷治癒促進効果・抗炎症効果を有するキチンに着目し、カルボキシルメチル(CM)基の化学修飾によりさらに生分解性を向上させたCMキチンとβTCPからなるTCP/C離キチン複合体スポンジ(TCP/CMs)を開発した。TCP/CMs上に骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を播種培養し、培養1,5,7日においてSEM観察を行った結果、良好な初期付着が認められた。またラット頭蓋骨欠損におけるTCP/CMsの埋植試験では無処置の欠損に比べ有意に欠損両端からの新生骨形成が認められ骨補填材として優れた特性を有することが明らかとなった。さらにイヌ1壁性欠損におけるbFGFを含浸させたTCP/CMs(bFGF/TCP/CMs)は、TCP/CMs単独よりも有意にセメント質形成を促進しbFGFの有効な担体となり得ることが示唆された。来年度はEMDの歯根面塗布後のbFGF/TCP/CMsの積層埋植の歯周組織再生効果について評価・検討を行う予定である。
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