前年度(平成22年度)の研究実績報告において同一歯根膜細初代培養系由来の1)血管形成能の高い細胞群(以下A細胞群)と2)低い細胞群の2つの細胞を利用した各細胞間における遺伝子発現頻度差についてMicro-Arrayによる網羅的な発現解析を完了したことを報告したが、当該年度においてはさらにはエピジェネティクス解析としての網羅的DNAメチル化解析を完了した。その結果を前年度におけるMicro-Array解析と照合した結果、"血管形成誘導能力の発現を制御すると思われる候補遺伝子"として選定していた遺伝子のうちの複数がエピジェネティックなレベルでも同様の修飾を受けていることが判明した。 その後、A細胞群に対してこの候補遺伝子の遺伝子発現レベルを指標にその発現を効率的に向上させるような環境下で血管新生を行うことによりin vitro三次元培養下にいて血管新生がより効率的に起こせることを見出した。興味深いことに、この遺伝子群の中には上記の刺激に呼応してその遺伝子発現に正または負の相関関係を示すものがあり、それらの遺伝子群が関わる血管新生誘導刺激に対するシグナル伝達機構についても現在調査を行なっている。 さらに上記の如く効率的な血管新生を誘導した際の詳細な形態学的調査によって、大変興味深いことに旺盛に血管新生を誘導している領域において、エオジン好染の非接着性血球様細胞が多く出現することを見出した。一般的に造血幹細胞と血管前駆細胞はヘマンジオブラスト(hemangioblast)と呼ばれる共通前駆細胞から分化すると考えられている。よってこのデータはA細胞が血管構成性前駆細胞に比べより上位のヘマンジオブラスト様細胞である可能性を示唆しており、加えて現在候補としている遺伝子群がヘマンジオブラストの誘導をも制御している可能性を示唆している。現在これらの候補遺伝子をより効率的に発現させるためのアデノウィルスベクターを作成中でありこれにより更なる解析が進むものと期待される。
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