本研究では歯根膜由来線維芽細胞様(以下PDL)由来ヘマンジオブラスト様細胞を血管内皮細胞と造血性幹細胞に自在に分化誘導し、これらの細胞の共同作業で初めて可能となる局所の効率的な血管新生の誘導技術を開発する。また、本研究開発によりPDL細胞から分化誘導された造血性幹細胞は、周囲の骨芽細胞(以下OB)の増殖・分化を促進させることが期待される細胞であり、このOB増殖・分化誘導効果と先の血管新生誘導効果を相乗的に応用した全く新たな着想に基づく次世代の歯周組織再生技術を開発する。 平成24年度はcDNAマイクロアレイをはじめとした様々な解析によって明らかになった造血性幹細胞としての能力の発現を誘導するモデル遺伝子としてCDX2に着目した。CDX2遺伝子はショウジョウバエにおけるホメオボックス遺伝子Caudalに相当する遺伝子であり、腸管上皮細胞の増殖や分化に関与している転写因子をコードしている。本研究ではCDX2を強発現するようなアデノウィルスベクターを作製し、PDL細胞へ感染、CDX2を過剰発現させてそのリアクションを解析した。その結果、CDX2を過剰発現させることによって造血性幹細胞様細胞への分化が観察された。 また、PDL細胞がラット由来であることから、遺伝的バックグラウンドが詳細に解析されているマウスから造血性幹細胞の分離を試みた。すなわちマウス脛骨を摘出し、骨髄よりフラッシュアウトされる細胞を培養して、造血幹細胞マーカーであるSca-1、CD34、CD45陽性の細胞を得た。本研究で得られたマウス骨髄由来造血性幹細胞様細胞はIV型コラーゲンには接着するもののI型コラーゲンには非接着であった。さらに間葉系幹細胞をフィーダーとすることによって旺盛に増殖した。 本研究で得られた知見や細胞を利用することによって、造血性幹細胞の分化や血管新生誘導効果のさらなる解明が期待される。
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