研究概要 |
間葉系幹細胞の一つと考えられている歯根膜細胞であるが、その性質に関しては不明な点が多い。そこで本研究においては、一般的に用いられているヒト由来の骨髄ならびに脂肪由来の間葉系幹細胞と歯根膜細胞を比較検討することを第一の目的として実験を実施した。フローサイトメトリーの結果からヒト歯根膜細胞に強く発現している表面抗原は検出できなかったが、PCRアレーのデータからNCAM1、S100A4、POSTNの強い発現が観察された(Iwata et al., Validation of human periodontal ligament-derived cells as a reliable cell source for cytotherapeutic use. 37 : 1088-1099. Journal of clinical periodontobgy. 2010)。この中で我々が注目したのはNCAM1(神経細胞接着分子;CD56)である。この分子は線維芽細胞増殖因子受容体と協調して神経突起伸長に関与する膜貫通タンパクであり、歯根膜組織には豊富な神経網が構築されていることを考慮するとその発現意味は興味深い。そこで、われわれは現在フローサイトメーターでNCAM1陽性細胞を濃縮するとともに、歯根膜細胞の神経分化能を検討している。市販の神経細胞分化培地にて培養し、遺伝子ならびにタンパク発現をRT-PCR法ならびにウエスタンブロッティングにて解析を進めている。
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