研究概要 |
高齢化社会となった現代では骨粗鬆症患者や予備群の増加により社会的な問題となっている.そのため骨粗鬆症患者がインプラント治療を希望する際に骨結合の獲得までの時間に影響を与えることが示唆されている.しかし,インプラント周囲に形成された新生骨の経時的評価はあまり報告されてない.本研究の目的は生体元素を配合した新規なインプラント表面処理法による骨粗鬆症ラットの骨質変化を明らかにすることである。 低ミネラル食を与えた卵巣摘出ラット(実験群)と健常ラット(対照群)に,インプラントを埋入した後に形成される新生骨の骨質と組織像の経時的な変化を,偏光顕微鏡を用いて明らかにした. インプラント埋入手術は全身麻酔下で埋入窩を膝関節から末梢側20mmの位置で,脛骨の長軸に対し垂直に直径2.5mmとし,インプラント用エンジンを用いて滅菌生理食塩水の注水下で形成後,インプラントを埋入した.ラットはインプラント埋入後4,12および20週で全身麻酔下により安楽死させ,脛骨を摘出した.脛骨は滅菌生理食塩水で洗浄後,70~100%のエタノール系列および100%アセトンにより骨組織の脱水と脱脂を行い,オステオレジン包埋キットにてレジン包埋後,自動精密切断機を使用して40μm幅の非脱灰標本とし,試料とした. 偏光顕微鏡による観察ではすべてのグループと週齢で,インプラント周囲に新生骨が形成されていた.新生骨は索状または網状に配列した線維性骨により構成され,強い偏光性が観察された.新生骨の幅は,G1およびG2とも週齢を重ねるごとに増加を認めた.G1およびG2のグループ間で比較すると同週齢では,G2の方が骨幅の増加を認めた.偏光顕微鏡は通常の光学顕微鏡では観察しにくい骨組織の形態学的特徴をわかりやすく観察することができた.
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