研究課題/領域番号 |
22791946
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前澤 仁志 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (80567727)
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キーワード | 脳磁図 / 下歯槽神経 / 舌神経 / 感覚異常 / 神経損傷 |
研究概要 |
平成23年度に脳磁図による舌感覚異常の定量評価に関する論文をNeuroscience Research誌に報告した。この論文では、独自に開発したピン電極を用いて舌刺激の体性感覚誘発脳磁場反応を計測し、非侵襲的に舌感覚異常を定量評価することに成功した。臨床では舌の感覚異常を患者の主観に頼った知覚検査法(二点識別検査法など)のみで評価しているため、信頼性、再現性が低く、神経損傷の重症度を定量的かつ客観的に評価する方法が存在しなかった。本研究で用いた手法は末梢(舌)の感覚異常を中枢(大脳皮質)の反応を指標に評価するため患者の主観に左右されず、"定量的かつ客観的"な診断方法である点に意義がある。一方、舌感覚異常の定量評価の際、健常側の反応をコントロールにする必要があるため、片側に生じた舌感覚異常の患者に対してのみ適用が可能であるという制約があった。つまり、顎変形症のように両側手術により生じる口唇の感覚異常の患者に対しては、コントロール側(健常側)がないため脳磁図による定量評価が困難であると考えられた。そこで、下口唇の感覚異常の患者ならびに健常者(コントロール群)を対象に口唇刺激体性感覚誘発脳磁場反応の記録、解析を行い、口唇感覚異常の定量評価を試みた。健常者の片側刺激では、右側、左側刺激ともに刺激対側半球に反応(P25m)が認められた。また、患者においては健常側刺激ではP25mの反応を認めたが、患部側刺激ではこの潜時の反応が消失していた。以上の結果から、P25mの反応の有無が下口唇の感覚異常の定量評価の指標となると考えられた。さらに、この方法を用いることで片側のみならず両側の感覚異常の患者に対しても感覚異常の定量的評価が可能となり、臨床における適応範囲が広まった。今後、この結果を国内外の学会において発表し、学術論文として報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に脳磁図による片側の舌感覚異常の定量的評価に関する論文を報告した。さらに、下口唇の感覚異常を有する患者の計測、解析も進めており、今後国内外の学会や学術論文を通じて報告していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
下記の実施を計画している。1.下口唇感覚異常の定量評価に関する結果を学会において発表し、論文として報告する。2.神経損傷の重症度を体性感覚誘発脳磁場から定量評価できるかを検討する。、具体的には、脳磁図検査後に神経縫合術等の外科的処置を施した患者を対象に、術中に確認された神経の状態をSunderlandの分類で評価し脳磁図検査の結果と比較する。これにより、体性感覚誘発脳磁場の大きさから神経損傷の客観的評価が可能となり、治療方針の決定に役立つ可能性がある。3.初回の脳磁図計測後、半年毎に脳磁図計測を施行し、知覚検査法による感覚異常の回復と脳磁図検査の経時的変化の比較を行う。これにより、同一被験者における感覚異常の経時的変化を脳磁図により評価できる可能性がある。
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