脳磁図計測による下唇の感覚異常の定量評価に関する報告を国際会議(Biomag 2012)にて行った。健常者の片側刺激では、右側、左側刺激ともに刺激対側半球の頭頂側頭部に短潜時(P25m)の誘発脳磁場反応が認められた。一方、下唇に感覚異常を呈する患者では、健常側刺激においては25msに誘発脳磁場反応を認めたが、患部側刺激ではこの成分の反応が消失していた。以上の結果から、対側半球における25msの誘発脳磁場反応の有無が下唇の感覚異常の定量評価の指標になることが示唆され、下唇の感覚異常の定量評価における脳磁図の有用性が示された。今後、学術誌を通して得られた成果を公表する予定である。 また、優位咬合側が口腔領域の体性感覚野由来の反応に及ぼす影響に関して検討を行った。感覚異常が生じることの多い舌と硬口蓋の後方部を刺激部位とし、優位咬合側刺激と反対側刺激時の半球間による誘発脳磁場反応の大きさの違いを検討した。舌の優位咬合側刺激では非優位咬合側刺激に比べて有意に誘発脳磁場反応が大きかったが、硬口蓋では優位咬合側刺激と非優位咬合側刺激で反応の大きさに差がなかった。探索運動により感覚を受容する舌の誘発脳磁場反応は優位咬合側による影響を受けるが、受動的に感覚を受容する硬口蓋では優位咬合側による影響を受けない可能性が示唆された。舌の後方部位の感覚異常を定量評価する際には、個々の被験者の優位咬合側を考慮したうえで誘発脳反応を評価する必要性があることが示唆された。この成果は国内学会にて報告を行った。今後、学術誌を通して成果を公表する予定である。
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